窪 詔之さんのこと★次ページ以降に作品リストがあります(画像はありません)私が窪詔之(くぼ・つぐゆき)さんの「ロビン」に惚れ込んで３８年。その後もさまざまなアニメのキャラクターを見てきましたが、窪さんが描かれたロビンとリリほど愛らしく繊細で、そして美しいキャラクターには、いまだに出会えておりません。 でもアニメブーム以降しばらくの間、アニメファン向けのＴＶ作品をあまり手がけておられなかったためか、ネット検索してもお名前がそれほど出てこないのが残念です。実際、業界人好みのアニメーターなんて言われているみたいです。 窪さんの絵の特徴でとっさに思いつくのは、あの抜群のデッサン力(人物パース？？)。「ロビン」でも身体の厚みが感じられるような立体的な絵を描かれていました。てっきり油絵かなにか専門的に勉強されたのかと思っていましたが、そんなことはなく、生まれつきの才能だったらしい．．．というのはなんともうらやましい限りです。 私は「窪さんはアニメを描くために生まれてこられたに違いない！」と長年信じておりますが(笑)、「アニメージュ」(S51年２月号)のインタビューなどを読みますと、この道に入られたきっかけは、かなり偶然に近いようです。もっと堅気の(？)進路が決まっていたものの、絵を描きたくてタツノコプロのアニメーター募集に応募したのが、その始まりとか。 ところがご本人は実はアニメの知識はろくに持っておらず、知っている漫画家の名前も手塚治虫先生くらいだったそうです。それが入社後半年で原画を描き始め、それ以降はアニメの道をまっしぐら。 そのおかげで私たちは、あの「ロビン」と出会えたわけなのですね。 この時のタツノコというのは、この会社として初めてのアニメ作品「宇宙エース」を作ろうとやっきになっているところでした。 東映の養成所で育てていたスタッフ(最初は東映と合作するはずだった)を引き上げてエース製作にとりかかったものの、アニメに関してはシロートばかりでわけがわからず、タツノコのスタッフたちは最初はずいぶん苦労したそうです。 しかし、できあがった「宇宙エース」は完成度が高く、たしかに今観ても４０年近くも前のものとは思えないほどです。さすがタツノコというべきでしょうか。 窪さんは「宇宙エース」の後、独立して「スタジオ・ビーズ」を設立され、そして東映動画の「ロビン」作画に加わりました。その後東映動画やタツノコプロの作品をいくつか制作してビーズは解散。すぐに「トップクラフト(社長は原徹氏)」というアニメ会社に移られ、取締役をされていました。この会社は主に外国向けのアニメ(「ホビットの冒険」「ラスト・ユニコーン」など)を作っていたため、当時の普通のＴＶアニメのファンにはそれほど知られていなかったと思います。 何故日本のＴＶアニメを作らなかったのかというと、日本のアニメの制作状況に満足いかなかったためだといわれます。この当時、日本は空前のアニメブームで、週に何十本ものＴＶアニメが放送されるという華やかな時代でした。しかし粗製濫造の傾向があったのも事実でした。 で、その「トップクラフト」のその後なんですが、突如、脚光を浴びる日がやってきました。そう、宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」です。 宮崎さんといえば「ハッスル・ベンケイ」「幽霊ホテル」などの原画を担当されたこともある、いわば「ロビン」仲間。でも実際はトップクラフトがナウシカを製作した時には窪さんはよその会社(パシフィック・アニメーション・コーポレーション：略称ＰＡＣ)に移られていて、宮崎さんと窪さんが一緒に仕事をすることはありませんでした。(代わりに？「恐竜ロボット現る」「幻の将軍」で原画を描かれていた小松原一男さんが作画監督を担当されてます。これも因縁？) 日本のアニメに飽き足らなくて作ったアニメ会社が、のちの「ジブリ」の母体となって、アカデミー賞まで取ってしまったわけですから、先見の明があるというか何というか．．．。 現在は「ぴえろ」(元：スタジオ・ぴえろ)に在籍しておられるようです。最新作は’０４年の「美鳥の日々」。何話か作画監督をされています。 今も現役！ということを知った時、たいへんうれしく思いました。今後も良い作品を沢山作っていただきたいと思います。 (2004年4月) 追加情報(2016/3/27) 現在の時点での最新作はディバインゲート(制作・ぴえろ：2016年1月〜)です。
|